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はじめに
慢性関節リウマチは,慢性多くは進行性に経過する多発関節炎で,長年月にわたる関節炎症の持続は最終的には関節破壊,強直,拘縮,変形など,関節の不可逆的病変を遺残して患者の日常生活機能の大幅な低下を招来するに至る.治療として薬剤による炎症の抑圧は病変の進行阻止の面から最も重視されねばならないが,同時に骨萎縮,筋拘縮の予防,関節可動域の保持,衰えた筋力の回復,日常生活機能の改善のためには運動療法をおろそかにすることはできない.
リウマチ患者は関節の疼痛のため,意識してなるべく動かない省力化の生活様式の維持につとめるため,長年月の間に,健康人に比し,著しい低運動の状態に陥っている場合が少なくない.この様な低運動の状態が長く続くと筋・骨など運動器の萎縮を招き,筋力は低下して関節は不安定となり,運動負荷による関節の機械的損傷の機会は増大し,これがひきがねとなって関節炎症の再燃,増悪が誘発され,悪循環のサイクルが形成されると考えられる.
しかしリウマチ患者は一般に運動負荷により局所炎症症状の一過性の増悪と疼痛の増大をみることが多く,そのため積極的な運動療法を行なうことは通常著しく困難である.この困難を克服するために,寒冷刺激の利用を試みたのは,Peggら1)が最初である.彼らはice packを用いて局所冷却を行い,これに短時間の強力な運動療法を組み合わせてリウマチ患者の治療を行い,こわばりと疼痛の軽減,関節可動域の改善にすぐれた効果が得られたと報告した.しかし彼らの報告は一般の注目するところとならず,リウマチの理学療法は依然として,明らかな理論的根拠をもたない温熱療法が主流として習慣的に踏襲されてきた2).
リウマチ患者の運動療法の導入に,本格的な寒冷刺激の利用を試みたのは山内3)である.彼らは液体酸素,液体窒素を用いた-180℃の極低温ガスの発生装置を考案し,これを用いて87名のリウマチ患者に積極的運動療法を負荷し,3カ月後に1例を除く残り全例に機能障害(class)の著明な改善を認め,就中寝たきりに近い重度の障害者が,治療後走れるまでに改善され,しかも内服の抗リウマチ剤を大幅に減量し得たと報告した4).
われわれもこの報告に刺激され,局所極低温刺激を利用した積極的運動療法の追試を行ったので,その成績について報告する.
治療の性質上対照群を設けることが困難であったため,過去の検査データの得られる症例については,その経時変動を対照として,これと極低温運動療法(Ultracold-Exercise Therapy,以下UCE療法と略)導入後の検査値の変動を比較検討する方法を試みた.
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