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はじめに
神経が電気刺激によって興奮し筋収縮をおこすという事実は古くから証明しつくされていることで,これを診断・治療に用いようという試みは数多くある.
脳卒中の麻痺足に背屈をさせる目的で,前脛骨筋の運動点を刺激する試みがLibersonによって1961年に行われてから,脊損を含む中枢神経系の麻痺筋を,残存する末梢神経を刺激して動かそうという研究が発表されて来たが,しかし成功症例が多いとはいえず,20年間の間に普及したとも言えない.
その主な研究の流れは,次のような系列のものである.
Vodovnik,Gracanin等によって,ユーゴスラビアのリュブリアナ大学を中心として1966年以来,研究し発表されて,現在も熱心に数多くの業績を出しつづけているグループがある.
さらに,McNeal,玉置等によって,アメリカのランチョ・ロスアミゴ病院で1968年から行われた研究で,脊損患者に同時に数カ所の刺激を行うに到ったグループがあり,玉置・山根等によって,植え込み電気刺激として「臨床整形外科」誌に紹介された.
同じく,1968年から日本独自の方法で埋め込み電極・カプセルを用いて動物実験を日本リハビリ医学会とバイオメカニズム学会に発表した,今村・稲坂等による研究がある.
さらに最近になって,川村等によって上記の諸報告を集約した形で,脳卒中患者に応用した表面電極による報告がある.この報告によると,ランチョで原形を報告されている足底スイッチの改良型を用いると筆者らの発表によってその有効性が明らかにされた刺激立ち上がりランプ方式を用い,さらに立ち上がりについても考えるなど,表面電極を用いた臨床報告としては最新の技術となっている.
これ等の報告はリハビリテーション医学の中で数少ない治療法の開発に関するもので,今後再び注目を集める可能性がある.
何れの系列の研究も,主として脳卒中,ついで脊損の末梢神経刺激による麻痺筋の駆動によって,歩行能力を獲得させたり,筋の収縮によって再訓練を行うなど,それまで麻痺筋の再肥大を考えた積極的な試みである.
もちろんそれ等の応用面では,なお問題が残され,適応も限られているが,今回はこの問題点にも触れながら,主として筆者らによって報告された基礎的データを中心に述べて,今後の研究者の何等かの参考とする.
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