Japanese
English
講座 リハビリテーション医のための人類遺伝学―遺伝性骨・軟部系統疾患―
5.血友病―遺伝と四肢機能障害並びにそのリハビリテーションアプローチ
Hemophilia: Genetics and Rehabilitation Approach for Functional Disturbances of Extremities.
井沢 淑郎
1
Toshiro Izawa
1
1神奈川県立こども医療センター整形外科
1Department of Orthopedic Surgery, Kanagawa Children's Medical Center.
キーワード:
血友病
,
伴性劣性遺伝
,
孤発例
,
保因者
,
補充療法
,
装具療法
Keyword:
血友病
,
伴性劣性遺伝
,
孤発例
,
保因者
,
補充療法
,
装具療法
pp.393-400
発行日 1984年5月10日
Published Date 1984/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105169
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はじめに
血友病は血液凝固因子が先天的に欠乏している疾患で,凝固第Ⅷ因子の欠乏に基づくものが血友病A,第Ⅸ因子欠乏によるものが血友病Bであることは周知の通りである.とくに前者は古く5世紀のユダヤ教典に割札礼に関する記載としてみられ,また,Victoria女王の子孫に多発し,王室病royal deseaseとよばれたことでも有名である.
本邦における血友病患者は,1976年に行われた厚生省小児慢性疾患研究班の全国調査1)で約2,800名が把握されており,その発生頻度は男子出生人口約4,500人に1人と推定され,発生率では世界的にほぼ共通しているとされている2).
血友病Aは全血友病患者の約82%を占め,血友病Bとともに伴性劣性遺伝形式をとる典型的な疾患であるが,家族発生のない孤発例が全体の約10%を占めることは,本症の遺伝相談に上に注意すべきことである.
近年,抗血友病製剤の目ざましい開発と,公費負担制度の著しい充実とによって,血友病患者に対する治療は容易になったため,健常者に伍して社会的活動を営むことができ,また生命を全うすることが可能となって来た.したがって,本症患者の就職・結婚などの問題が取りあげられて来ており,今後ますますこの問題はクローズアップされてくるであろう.しかしながら,これら患者のリハビリテーションの上で最も社会的活動を阻害するものの一つは,四肢の機能障害である.
そこで,本稿では血友病の凝血学的な問題は専門書にゆずることとして,自験例にもとづいて本症の遺伝と四肢の機能障害並びにそのリハビリテーションアプローチを中心に述べることにする.
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