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はじめに
整形外科の日常診療において,血友病患者(血友病AおよびB)に遭遇する機会は必ずしも多くはない.これは,元来血友病が比較的稀な疾患(男子出生人口約1万人に1人)であるとともに,疾患の性格上主として内科あるいは小児科で取扱われることが多い故であろう.
血友病患者を最も悩ますものは,時間と部位を選ばずに起る出血と,これに伴なう恐怖であることは論をまたない.しかし,①関節内出血およびその反復によって生ずる関節障害(血友病性関節症haemophilic arthropathy―Schönlein((1830)の命名―),②軟部組織,特に筋肉内出血などによる関節の変形・拘縮に起因する機能障害は,頻度も高く,患者の日常生活や社会活動に大きな影響をもたらすので整形外科的に最も重要な問題であり,さらに,③血友病性偽腫瘍(haemophilic pseudotumor),④骨折等の外傷や疾病の合併なども見逃し得ない問題である.
近年,わが国でも抗血友病製剤注)のの著しい開発と,公費負担の適用とによって,血友病に対する止血管理は極めて容易となり,又,種々のmanipulationや手術侵襲もこれら製剤の使用による欠乏因子の補充療法(replacement therapy)のもとに比較的楽に行なえるようになった.さらに現在はこれら製剤の予防的投与による治療(prophylactic therapy)の方向に進みつつある.しかしながら,まだ四肢の機能障害に悩む患者の現存することも事実であり,また,頻回の補充療法あるいは予防的治療に伴なう抗体産生や肝炎などの合併症の発生になお問題が残されている,したがって,上述の整形外科的問題は現在なお重要な課題である.
そこで,自験例119例の経験をもとに整形外科的ないくつかの問題について概説する.
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