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はじめに
昭和57年6月16日の厚生省発表によると,昭和55年度の社会保障給付費の実態をみると,医療保険,年金,生活保護などの社会保障制度から55年度1年間に給付された総額は,24兆6千44億円で,前年度に比べて2兆6千978億円,12.3%の増加であり,ここ10年間で総額で約7倍に達している.福祉水準の指標となる対国民所得費は,昭和45年度5.79%(35,239億円),51年度10.46%(144,828億円),52年度11.03%(168,462億円),53年度11.82%(197,213億円),54年度12.32%(219,066億円),55年度12.70%(246,044億円)と着実に増加しており,低成長経済下でも福祉関係支出の増加傾向が続いている.そしてこの社会保険給付費の給付内容では「医療」と「年金」の給付費がそれぞれ10兆円の大台を突破していると所聞に報じられている.
我が国におけるリハビリテーション医療の歴史的流れをみると,医療の進歩とそれを支える経済的な発展と行政施策の改組―医療費公費負担―が重要な役割りを果したといえる.
昭和22年末に作られた育成医療の制度は,肢体不自由児にとっては,肢体不自由児施設における措置入院の療育と共に,車の両輪のごとくに有効な行政施策で,脊髄性小児麻痺,先天性股関節脱臼,内反足といった肢体不自由児の多くがその恩恵をうけて社会に巣立っていったことの記憶は,20年以上の経験を持つ整形外科医にとっては古くはない.しかし,時代の流れと共に,これら小児整形外科疾患で,脊髄性小児麻痺は予防可能となり,先天性股関節脱臼,内反足は早期治療の進歩で著るしい成果をあげている現況であり,また一方では,0歳児のための乳児医療制度がより一層の早期治療を助長しており,さらに重度の肢体不自由児に対しては,重症心身障害児者医療が重宝されてきている中で,肢体不自由児にとっては,育成医療の利用価値の変化がみられてきたことは確かである.ここではこの問題について論じてみたい.
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