Japanese
English
講座 リハビリテーション医学の評価法(6)
心理的問題の評価
Psychological Evaluation.
大橋 正洋
1
,
山本 勝
1
Masahiro Ohashi
1
,
Masaru Yamamoto
1
1神奈川県総合リハビリテーションセンターリハ医学科
1Kanagawa Rehabilitation Center.
キーワード:
心理評価
,
心理検査
Keyword:
心理評価
,
心理検査
pp.689-694
発行日 1982年7月10日
Published Date 1982/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104786
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.リハビリテーションにおける心理評価の役割り
リハビリテーション医療における心理評価は,一般に臨床心理士によってなされる各種心理検査の結果に基づいて判定が下される.ここでいう心理検査とは,患者に,ある一定の場面で一定の作業を行わせ,その成績やその時の行動を一定の基準と比較して記述するものである.検査の目的は,被験者のある特定の能力,性格特性などを知ることにある.検査の結果は,その種類や使用目的によっても異なるが,数値として,あるいは文章としてあらわされる.検査法の備えるべき条件としては,同一人に同じ条件で検査を繰り返したときに同じ結果が得られるという信頼性と,はかろうとしているものを的確にとらえることができるという妥当性のあること,さらに,被験者に与える負担が少なく,採点が客観的で簡単であるといったことがあげられる.
しかし,心理検査が,心電図や脳波のような他の臨床検査と異なる点は,検査の対象とする知能とか性格といったものが,実体としてとらえることのできない仮説的な構成概念だということである.たとえば,知能検査で求めるIQ(知能指数)にしても,それは絶対的な数字ではなく,等質の言語習慣と文化をもった母集団との比較を統計的な操作を行ったうえで得た,相対的な数字にすぎない.脳損傷の既往を持つ患者でIQ 100という数値を得たとしても,発症前の知的能力が平均以上であったと推測される場合は,これは正常値ではなく,この個人にとっては低下した値であると解釈されなければならない.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.