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はじめに
神経伝導速度が温度の影響を受けることはよく知られた事実であるが,文献の多くは上肢を対象としたものであり,下肢について,とくにその運動神経について研究された報告はきわめて少ない1,2).
一方,足部の温度は一般に手部より低く,季節間差があり,とくに四肢温に低下をみる疾患ではこの傾向がしばしば顕著であるという.私たちのクリニックにおける過去1年間の記録においても11~3月に実施した筋電図患者の足部(内果部)の皮膚温は,7~9月のものより平均値において約3℃低く,手掌部皮膚温とくらべてかなり低く,個人間差も大きい.このことは下肢の神経伝導検査では,とくに冬期においては,上肢以上に温度への注意をはらうべきであることを示唆する.測定値が,正常としている範囲の下限あるいはやや低下を示す場合,あるいはある患者のニューロパチーの進行度や回復度を経時的に観察する時にはなおさらであろう.
文献にみる温度チェックの方法としては,環境温(室温)によるもの,神経周囲温または筋肉温によるもの,皮膚温によるものがある.
第1者の方法は,組織温の環境への順応が冬期ではとくに長時間を要する点で問題がある.24~25℃程度の室温では,15~20分の安静待機によっても冬期の足部が必ずしも高温とならぬことは図1に示すとおりである.
第2者の方法は,針を刺入する苦痛を患者に与えざるをえない点で実用面での欠点をもつ.これらにくらべて皮膚温の測定は簡易であり,これによって神経への温度影響を推測できれば臨床面では有用であろう.
本論文の目的は,冬期の下肢(下腿および足部)の皮層温が神経伝導測定時においてどの程度の個人間差があり,これと運動神経伝導速度との間にどのような関係があるかを知ることであり,健康青年を対象とした以下の検索を行った.
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