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まえがき
てんかん者のリハビリテーションとは,どのようなことを指しているのであろうか.その理念と範囲は何であろうか.リハビリテーション白書1)によれば,障害者のリハビリテーションとは,単なる治療訓練の域をはるかにこえて,全体的な人間としての障害者の生きる権利の回復すなわち“全人間的復権”であるという.その意味で,てんかん者のリハビリテーションを考えると,その含む範囲は,きわめて広いものといえよう.
1.まず,最大の医学的治療.
2.随伴する身体的脱落症状(たとえば,四肢の一部の麻痺や失調)の評価とそれに対する機能訓練.
3.精神面での能力の評価,たとえば,痴呆,依存,意欲の減退,情緒不安定,などの精神面を主にした個人の能力評価とそれに対する適切な対策.
4.てんかん発作の程度とそれに見合う職種の選定.
5.てんかん児の教育.
6.てんかんという社会的偏見に対する絶えざる教育と啓蒙,てんかん制圧への社会的運動.
以上のことがらは,すなわち,てんかんに悩む人間のすべての面に及ぶわけであるが,ここではこれらすべてに亘って詳述することは避け,次の諸点に問題をしぼって,考察を加えてみたい.
1.職業リハビリテーション:軽度のてんかん者(発作が完全に抑制され,発作以外の見るべき随伴症状をもたないもの)には,一般競争社会での職業につかせること.中等度の障害を持つてんかん者には,職業訓練と,引き続き一般社会への積極的参加を,また重度てんかん患者にも保護的工場での仕事を見出して,積極的,創造的社会の一員として自立させるようにとりはからうこと.
2.このような職業リハビリテーションを円滑に行うのに必要なてんかんについての基礎的知識.
3.てんかん者のリハビリテーションの実際とそれを困難にしている主な要因.
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