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Ⅰ.はじめに
てんかんに限らず,患者に対する社会的福祉対策の実現とその充実のためには,これに対する社会的ニードの高まりということがまず必要であろう.わが国でも,てんかんに対する社会的対策を要望する声は,以前から医療の現場にきかれていたのではあるが,ただ,それが一つの社会的な動きとはなっていなかった.しかし,最近(昭和48年),ようやく,「てんかんの患者を守る会」と「小児てんかんの子どもをもつ親の会」という2つの組職が,ほぼ時を同じくして発足し,その後,昭和51年には,これら2つの組織が日本てんかん協会(波の会)として統合され,以後,活発な活動を続けて今日に至っているのである.発端の2つの会の設立の主たる目的が,ともに,てんかん患者の福祉とてんかんについての啓蒙ということにあったから,その統合は自然の流れであったといえる.ところで,「守る会」も「親の会」もその発足とともにそれぞれ独自の機関誌を発行してきたが,そこには患児・患者の現状についての悩みや将来への不安が,読者の声として数多く訴えられていた.そして,その記事のなかには,リハビリテーションという言葉も度々現われたのである.てんかん患者のリハビリテーションということは,てんかん患者の社会的現状とこれらの会の設立の趣旨からみて,当然出て来る問題であったといえよう.やがて,そのことは「波の会」の機関誌“波”における,てんかん患者のリハビリテーションに関する解説記事8,9)として具体的な形で現われた.しかし,残念なことに,わが国では,てんかん患者を対象とした専門的なリハビリテーションの実施は,いまのところ全くみられていない,実践のないところに,具体的な問題のほり下げは生まれ得ない訳で,わが国におけるてんかんのリハビリテーションは,その全てを今後の課題として残しているといわざるを得ないのである.
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