巻頭言
心臓リハビリテーションと予防心臓学
土肥 豊
1
1埼玉医科大学
pp.425
発行日 1981年6月10日
Published Date 1981/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104553
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ヒポクラテスの昔から臨床医学は主として疾病を治すための診断治療学にその主力をそそいできた.しかし,臨床医学ではそれらの分野の他に,第一相とよばれる疾病の予防にたずさわる領域と,第三相とよばれる疾病の治療に続く社会復帰に至る過程とがあり,第一相の予防医学,第二相の診断治療学,第三相のリハビリテーションの三相がそろってはじめて完成された臨床医学ということができるわけである.冠動脈疾患をはじめ多くの心臓病や,高血圧その他の血管系の疾病を含む循環器病学の領城でも,近年に至り漸く,第三相である心臓リハビリテーション cardiac rehabilitation に識者の眼が向けられ,そして最近に至り,予防心臓学preventive cardiology がまた世の注目を集めはじめたところである.一例として心筋梗塞を例にとってみよう.以前は冠動脈疾患は遺伝的素因が濃厚であり,それを予防することはきわめて困難と考えられていたし,また,一度心筋梗塞にかかってしまうと社会的再帰は不可能とされてきた.
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