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はじめに
「完全参加と平等」をテーマに掲げ,国際連合では,昭和56年を「国際障害者年」と定め,全世界に呼びかけている.各国では,この目標達成のためそれぞれのレベルで種々のプログラムや行動等のための準備が進められていることと思われる.
この完全参加のひとつには,当然,職業を通しての社会参加が求められ,ここに職業リハビリテーションが重大な役割を帯びてくることはいうまでもない.職業リハビリテーションの窮極の目的は「職業自立」である.そのためには各教育訓練を始め,特に雇用の場と機会を拡大し,また身体障害者(以下“身障者”という)自ら,地域の中で,あらゆる人達と共に職業生活をエンジョイできる社会作りをする必要も生じるのである.
現在,わが国における身障者数は,昭和45年以降,調査が行われていないため,その実態は明確ではないが,240万人以上(53年度身障者手帳交付台帳登載数)ともいわれており,その中でも職業リハビリテーションを希望している者も多くいるものと思われる.これに対し,国や公共団体では,各種施策が進められているものの,まだ十分とは言えない現状である.このうち,昭和51年に改正された身体障害者雇用促進法は,種々な問題点を含みながらも,その効果が表われ始めているが,真の法の精神に則っての雇用とは若干異なる面が見られるのは残念なことである.
さて,本稿では,この職業リハビリテーションの一環を担う,身障者の職業訓練を中心に現状と問題点等を述べてみたい.
職業リハビリテーションについては,よく知られているとおり,ILO(国際労働機関)の勧告第99号があり,これによれば,次のように定義されている.「職業指導,職業訓練,選択方式職業斡旋などの職業サービスの提供を含めた継続的,綜合的リハビリテーション過程の一部であって,身障者の適切な就職と,その維持をはかるものである」.
職業リハビリテーションについては,このILOの勧告の中でほぼ言いつくされているものと言える.したがって,わが国の身障者の職業訓練もこの勧告を基として進められていくことが望まれる.身障者の福祉について世論の関心の高まりとともに,職業的自立についても身障者自身の意識の高揚,特に社会参加への強い意向とこれにつれて,社会における身障者への認識の高まりも加わり,身障者の社会参加は近年めざましい感がある.
ここで,身障者の就業状況をみてみると表1のとおりであり,いろいろの問題はあるが,この傾向は身障者にとっても,社会全体にとっても大変意義あることである.
この就業による身障者の社会参加の促進を担当している機関は,国レベルでは労働省であり,実施機関は,各都道府県の職業安定機関を中心として,職業訓練校,その他相談判定機関等が協力し合って行っている.
ここで,身障者が就業に至るまでの行政のかかわりをみてみると,次のとおりである.まず,身障者は,職業安定所で,求職登録をすることに始まり,それにより,職業相談,職業能力検査や測定判定が行われる.これ等を経て,職業指導,職業紹介が行われ就職に至るというのが一般形態である.
しかし,技能習得状況,社会適応能力,また身体的状況等により,直ちに就職することが困難な場合や,技能を身に付けた後の就職条件がより有利な場合等は,職業訓練・職場適応訓練・職業指導または職業講習等の受講を指示され,それを終了後に職業紹介,就職という過程がとられる.この過程において,職業訓練を行うのが,職業訓練行政であり訓練を実施するのか職業訓練校である.
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