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厚生労働省の身体障害者・児の実態調査および社会福祉施設等調査報告によれば,わが国の視覚障害者・児は,約35万人と推定されている.このような視覚障害者に対するリハビリテーションには,生活訓練,職能訓練,職業訓練などのプログラムが必要とされる.そのなかでも,精神的・能力的に生活自立の獲得を目指すための生活訓練(あるいは社会適応訓練)はきわめて重要なプログラムであり,社会リハビリテーションの領域に属する.現状では,生活訓練を行う職員は,生活支援員(昨年度までは生活指導員)が従事している.しかしながら,生活支援員は,主に社会福祉士としての専門性や技能を備えた専門職群である.生活訓練に従事する職員は,リハビリテーション論はもとより,視覚・触覚・聴覚・体性感覚などの情報処理過程を学ぶための感覚生理学,歩行技術,コミュニケーション技能,ADL技能,ロービジョン等かなり専門的に高度な知識とともに,アイマスクによる実技,ロービジョン・シミュレーションによる実技など生活全般に係る諸技能をインストラクションできるようにならなければならない.歩行訓練は,視覚障害者の生命に危険と背中合わせの訓練を実施している.ホーム転落事故などはその例としてあげられる.生活支援員の専門性とは異なっている.ケースワークやグループワークを理学療法士や作業療法士が担当しないのと同じことである.生活訓練に従事する者の養成は,国立身体障害者リハビリテーションセンター学院と日本ライトハウスにおいて行われている.これらの養成課程の修了者は,視覚障害者のリハビリテーションに携わりたくてもできないので,異なる職種で就職するしか方法がない.
アメリカ,オーストラリア,ヨーロッパ諸国では,これらの職種は歩行訓練士およびリハビリテーション・ティーチャーとして社会的に認知され,視覚障害者に対するリハビリテーションのスタッフとして大きな役割を果たしている.
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