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はじめに
リハビリテーションの理念は障害を負う故に損われている人権を回復腹することである.と理解すれば,これを具現する施策としてのリハビリテーションの概念は極めて幅広く把えることができる.
厚生行政の分野だけでも,医療制度,医薬品,医療保険,所得保障,公衆衛生,社会福祉の各部門にまたがり,社会福祉の分野でも児童,成人,老人,戦傷病者の対象別に対策を異にしている.
与えられた紙幅ではこれら各分野の全てに触れるゆとりはないので,ここでは,身体障害者福祉法に基づく施策を中心に,その動向と課題を概観することとしたい.
さて,本年は身体障害者福祉法が施行されて30年目にあたる.この間,技術革新はめざましく,医学・薬学の進歩,産業・交通の発達,保健衛生・栄養の改善等は社会経済の発展に大きく寄与したが,他方,麻痺障害者の増加や障害者の延齢,重度障害者の顕在化等障害者像の変貌へも影響を及ぼした.また,障害者自身の主体性確立への意識の昂揚等,障害者をめぐる社会意識も変化してきた.
このような状況を背景に,身体障害者の福祉ニーズは多様化しつつ増大してきたが,これに対応して施策も年年拡充されてきた.
法施行当時は補装具の交付,更生医療の給付,更生施設と授産施設が主たる内容であったものが,身体障害者の社会活動を促進するための施策や重度障害者対策を次第にとり入れてきたのである.
しかしながら,諸情勢の変化に対応するためには現行制度において見直しの必要なものも少なくない.
30年の歴史をふり返ってみると,現在は一つの転換期にあるといえるが,これからの身体障害者福祉行政は,多岐に亘る施策の総合的調整や有機的連携を,障害者の個人の尊厳や社会連帯といった理念に基づいて示した心身障害者対策基本法の趣旨を尊重しつつ,リハビリテーションの推進に努めなければならない.このことが,とりもなおさず明年に迫った国際障害者年のテーマ「障害者の参加と平等」の実現にもつながるものと考える.
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