巻頭言
老人リハビリテーションの問題点―温泉地リハ・センターの現場より
石神 重信
1
1リハビリテーションセンター鹿教湯病院
pp.907
発行日 1979年12月10日
Published Date 1979/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104236
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温泉地のリハ・センターに赴任し,主として老人患者を扱うようになって,老人のリハの理想と現実のギャップに行き場のない苦悩と憤りをおぼえることが多い.
リハが,未だ声高に早期よりの治療開始の必要性を啓蒙せざるをえない現状にある反面,いわゆるリハ専門病院では,積極的リハの適応がないと思われる老人患者が滞留してベッドを占領し,必要な患者は入れないといった事態がでてきていることは否定しえない事実である.この傾向は,温泉地にあるリハ・センターに顕著となりつつあり,当鹿教湯病院も例外ではなく,入院患者の3割がこれに該当すると思われる.滞留する老人だけでなく,病院より病院へわたりあるくジプシー型や,ある季節になると再入院を希望する渡り鳥型の老人も,このタイプと考えてよかろう.小生は,この問題を重視して,身体機能および環境因子(家族・住環境等)等から分析したところ,この群の老人の特徴は,身体機能では,回復は限界に達していて,歩行や日常生活動作の自立度は高く,家庭・経済的にも恵まれており,従来の滞留の原因と考えられた家庭復帰への阻害因子とは逆の結果を得た.入院費では,老人医療による個人負担のない老人の割合も多いこともわかった.これは,日本での温泉地に原点をもつリハの特殊性から,湯治意識より抜けきらない患者や家族の要求するリハと,リハ適応との間に大きなずれがあることも一因であるが,根本的には老人福祉の問題を抜きにしては考えられない問題でもあろう.
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