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はじめに
来る1980年代は,70年代の10年間の歩みの中で提起された各種の課題の1つである「地域におけるリハビリテーション」がどう展開していくかを,社会福祉の原点にたちかえって再検討すべき時代であると確信したい.とくに,障害者をとり囲むリハビリテーション関係者と地域社会の人々が,一体となって,障害者の最終目標である社会参加を援助する方策を総合的に樹立すべきものと考える.
現代の社会は,構造的に分極時代にあるといってよく,統合と分化の相反する社会現象が起こっており,2極間をいかに調和するかが重要となってきている.障害者の対策に関しても,現実的処理である施設収容か,将来的方向である地域福祉の充実か,この連係をいかにすべきかが最大の鍵となっている.
一方,医療と福祉の接点にあるリハビリテーションは,一貫した体系のもとに総合性を指向すべきであるが,現実には,各段階における専門性が先行する傾向があるといえる.
高度成長が契機となって,各地にリハビリテーション関連施設が続々と建設されてきたが,この「リハビリテーション・ブーム」も,石油ショックによる急激な経済不況から低成長時代に変革すると,営々と築いてきた社会福祉の分野にも,「あり方」に関して見直し論が抬頭してきており,砂上の楼閣であったかと痛感する.いまや,過去の行政主導型から,住民主導型へ,施設中心主義から地域福祉の推進へ,ハードウェアからソフトウェアへと質的転換が強調されてきている.
神奈川県においても,福祉県をめざして,社会福祉の向上のために多面的な施策を実施してきたが,今後の中心的課題を住民の連帯意識にもとづく地域ケアの樹立に目標をおき,2年前から県民運動として「ともしび運動」を展開してきている.仏典の一句「燈々無尽」から引用したもので,心身障害者の職業自立と老人の生きがい対策を2本の柱に,組織的な総合対策を強力に推進している.
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