Japanese
English
特集 施設のあり方を考える
リハビリテーションの流れにおける肢体不自由児施設
The Problems of the Home and Hospital for the Crippled Children.
寺沢 幸一
1
Koichi Terasawa
1
1ひかり整肢学園
1Hikari Seishi Gakuen (The Home and Hospital for the Crippled Children).
キーワード:
施設
,
児童福祉法
,
身体障害者福祉法
,
脳性麻痺
Keyword:
施設
,
児童福祉法
,
身体障害者福祉法
,
脳性麻痺
pp.641-645
発行日 1974年9月10日
Published Date 1974/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103194
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はじめに
学生の頃,私は朝永三十郎博士の「近世における我の自覚史」を読んだことがある.この本は哲学的な著作でよくその内容を理解できた訳ではないが,その思想と読後の感動は後まで残った.近世を開いた新発見,思想上もしくは科学史上の諸新発見の最大なものは「我」の発見であり,この「我」が漸次自己の意識を明化し,深化していった歴史が近代文化史だというのである.私は眼前に展開される親や重度障害児また若者たちの生き生きと動く姿の中に,博士の「我の自覚史」がここにも新しい頁を作っているという受取り方をした.
肢体不自由児施設は児童福祉法に基づいて作られたが,この児童福祉法の思想的背景は児童憲章の中に盛られている.これは昭和26年に作られ,その前文に「児童は人として重んぜられる……」とあり,その11項は「すべての児童は体の不自由な場合,または精神の機能が不十分な場合に適切な治療と教育と保護が与えられる」といっている.これは1924年の国際連盟で採択された児童の権利憲章の日本版ともいうべきものである.
私は恩師児玉俊夫岡山大学教授から命を受けて香川県立ひかり整肢学園に赴任し15年余を経た.この間肢体不自由児の療育に携わる機会を得た.今回編集子から標題の執筆を依頼された.執筆の意欲を持たないわけではなかったが,このような論述が任でないことと時間的な余裕がないので一度はお断わりしたが,強ってのお求めなのでお引受けした.今出来上がってみると,やはり当初の予想通り不出来なもので客観的な記述よりも主観的要素が強いことを恐れ,ご了恕をお願いする次第である.
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