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はじめに
「この子は歩けるようになるだろうか?」,「失禁や歩行障害がありながら幼稚園や学校に受入れてもらえるだろうか?」,「将来,社会に出て自活できるだろうか?」等,二分脊椎症の患者やその両親は数多くの不安や希望をもって病院や施設を訪れてくる.また,学齢期に近い患者では,「失禁を上手に処理できるようになりたい」とか「普通の学校に行けるだろうか? 養護学校の方がよいのだろうか?」等の問題に直面している.
二分脊椎症のわが国における発生頻度は欧米に比べてきわめて低く,全生産児1,000人中0.1ないし0.3人と推定されており,患者の死亡率も高く,医学的関心が高まり積極的に治療が行われるようになったのは最近のことである.近年,脊髄髄膜瘤早期手術の普及と手術手技の進歩によって本症患者の生存率が著しく向上し,水頭症の予防および治療法の確立により知能発達障害を示す患者の数も減少した.また,医学的知識の普及によって幼少時より泌尿器科,整形外科あるいは肢体不自由児施設を定期的に受診するものも多くなり,失禁と歩行障害をもちながら教育や社会生活への適合の問題に直面している患者が次第に増加してきている.しかし,これら患者の家庭や学校あるいは社会における実状や問題点についてはほとんど知られていない現状である.
昭和47年頃より「二分脊椎症児親の会」が全国各地で次第に結成されるようになり,昭和50年,これらが「全国脊椎披裂(二分脊椎)症児・者を守る会」として全国組織に発展した.
現在,会員として415名の患者が登録され,相互の援助,講演会の開催や会報の発行による知識の交流と向上,さらに公的援助制度の設定等,本症患者の自立と福祉の実現をめざして活発な活動を行っている.昭和51年4月,当時の全会員390名の協力をえて行ったアンケートによる実態調査には,310通79%と高率の回答があり,患者および家族の熱意がうかがわれた.アンケート調査の概略は昭和51年6月,第4回日本小児神経外科学研究会に発表したが,今回これらアンケートより患者および両親の家庭における実状と問題点を教育と社会適合の面より検討し,今後の治療のあり方の参考にしたい.
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