特集 変貌するか医療法人
病院の設立主体・所有形態の現状と比較―日本と欧米諸国
長谷川 敏彦
1
1国立保健医療科学院政策科学部
pp.843-849
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100698
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
今日,日本の医療界では,設立の主体,所有の形態をめぐる議論が関心を呼んでいる.その1つは急性期病院の中核を担ってきた公的病院の経営のあり方をめぐる議論,2つ目は数的に日本の入院施設の大半を担ってきた私的病院のあり方をめぐる議論である.3つ目には非営利を建前としてきた医療産業界での営利企業の参入の是非をめぐる論争である.
国立病院は従来赤字体質で,その多くが設備投資や経常経費に公的資金(税金)を補塡して運営してきた.しかしバブル経済の破綻以降,中央,地方政府ともに戦後最長の不況の中で,極めて厳しい財政状況となっており,行政的な政策医療のためとの名目で補塡されてきた赤字補塡も事実上不可能となり,新たな所有形態の提案がなされるに至っている.具体的には国立病院の場合,旧厚生省所有の国立病院,旧文部省所有の大学病院,そして旧労働省所有の労災病院が,来年4月をもって独立行政法人に移管することとなり,多くの自治体で病院の民営化や公社化が進められている.私的病院については,かつてその多くが院長である医師の所有の下にあり,医師による個人所有であったが,経営の非効率性や不透明性から,以前からの旧厚生省の主導もあって法人化へと流れてきている.さらに医療法人の中でも持分のない特定・特別医療法人への移行が強く行政指導されている.小泉内閣発足以降の行政改革委員会の中で,医療は規制緩和の最も遅れた領域と位置づけられ,企業の参入や特区による実験的試行が提案されている.結果的には特区で保険適用外の種目に関する営利団体の参入が始まろうとしている.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.