やさしい目で きびしい目で・106
出産随想
五嶋 摩理
1
1東京女子医科大学東医療センター
pp.1751
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102440
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長男が産まれたのは国立大学附属病院の分院であった。陣痛室はなく,付き添いも認められず,点滴もしなかった。分娩台に寝かされ,助産師は「何かあったら呼んでください」と言ったきり去ってしまったため,夜中に何時間も孤独と痛みに耐えた。破水し,急激な陣痛がきて呼び鈴を押したら,「まだまだでしょう」と言いながら助産師が来てくれたが,既に排臨していたため,間もなく出産となった。入院は,だだっ広い大部屋で途中から1人になった(その日の出産は私だけで,その後もしばらく出産予定がなかった)。担当医や助産師がたまに顔を出すだけの子供と2人きりの1週間の入院生活はとても長く感じた。出産費用は安かったが,ここではもう二度と出産したくないと思った(この病院はその後閉鎖した)。
長女はニューヨーク市内の私立病院で出産した。入院後間もなく麻酔科医が部屋に来て,無痛分娩を勧めた。「痛みなら我慢します」と断ったが,「ほとんど全員無痛分娩なので,痛くて騒ぐ人はいませんよ」と説得されて渋々了解した。確かに痛みは少なかったが,その分微弱陣痛になってしまった(予想通り)。「なかなか産まれないのなら帰りますよ」と産科医に催促され(開業医が,担当患者の出産のときだけ契約している病院に出張しているため),陣痛誘発剤を点滴された。夫は出産の立ち会いを指示されており,立ち会いは大変心強かった。入院食のメニューやルームサービスはホテル仕様で,入院は2泊3日だったが疲れがとれて快適だった。
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