同人放談
二,三の随想
林 基之
1
1東邦大学
pp.843-844
発行日 1959年9月10日
Published Date 1959/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202037
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I)神経質で,物欲しげな小さい男
今度,岸首相が渡英するについて,英国の政治家達は,例の外交辞令で,適当に接待したらしいが,一般大衆の感情は,必ずしもよくはないようだ。われわれは,John Bullとは,如何にもGentlemanぶつた行儀のよい,当り障りのないことをいう人間のように思つていたが,ある英新聞が,岸首相を表題のような男だと書いているのに驚いた。あるいはこれは,日本人全体のことをいつているのかも知れない。国が狭く,貧乏して,人の多い場合,このような男になり下ることも仕方がないような気がする。それにしても,第二次大戦で,完全に参つて了うと思おれたJohn Bullのねばり強さ,ふてぶてしさは,何処から来るのだろうか,やはり素質の問題だろうか,又は永い苦闘の歴史によるDemocracyが,かかる強い力を養成したのではあるまいか,理想に溺れず,現実をしつかり見つめて,あくまでCommon Senseを働かしつつ処して行く態度,われわれも徒らに彼等のねばりに感心するだけでなく,もつと自主的になり,物欲しげに方々歩き廻ることを止めて,目的のある行動をしなくては,何事も空転するばかりで,何等実を結ばないというものだ。いやな憎いことをいうJohn Bullだと怒らないで,われわれの欠点を矯正し,今に見ていうと"忍従"することこそ,若い人々に望みたい所だ。
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