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はじめに
脳血管障害(以下CVDと略)にともなう言語障害は,
1.失語症
2.発語失行
3.麻痺性構音障害
などがあり,麻痺性溝音障害には仮性球麻痺によるものや,小脳症状に伴ってくる失調性構音障害(ataxic dysarthria),またパーキンソン症状に附随してみられるhypokinetic hypertonic dysarthriaなども含まれる.特殊なものとしては純粋失語症,失書症や聴覚失認などが挙げられるがその頻度ははるかに少ない.
いずれの言語障害にしても,多くはスクリーニングの必要もなく,二言三言,言葉を交わすことによって障害のあることを知り得るものであり,ST部門で本テストを行えばよい.したがって,ここでいうスクリーニングとは,
1.医師がCVD患者に接した際,その言語機能が異常なのか,痴呆によるものか,教育レベルが低いためなのか,あるいは方言などによるものか,などと迷う場合が少なくないが,ST部門に評価を依頼するかどうかを決めるためのスクリーニング
2.言語治療士が同様の理由で本テストを行うべきかどうかを決めるためのpreliminary borderline test
などが考えられ,いずれにしてもスクリーニングの必要なものはborderlineに属するものに限られるといえるであろう.
中等度以上の言語障害は,先述のように2,3の会話を交わす中で,言語刺激にたいする言語反応はもちろん,その際の表情,態度から言語障害を発見することは困難ではない.とくに麻痺性構音障害は音の歪み,置換(発語失行と異なり,構音の誤りに一定の傾向がみられる)の有無や明瞭度から判定は難しくないし,とくに仮性球麻痺によるものはその特有の症状から容易である.
小脳性の失調性構音障害は発語器官の協調運動障害(Dyskinesia)による特有の話しかた(話し始めは困難であるが爆発的に話が出てくること,これが加速されてslurred speechになること,これを意識して抑制しようとするため断節性のいわゆるscanning speechになる)および本来の小脳症状から,やはりその診断は困難なものではないし,同様なことはparkinson症状の際の発語器官のhypokinesisによる単調な低い小声についてもいえることである.
もっとも問題になるのはborderlineに属する失語症と発語失行である.発語失行は本来失語症とは別のカテゴリに属するものであり,まれには失語症のない発語失行もあるが,大部分はBroca型失語に合併するものなので,今後失語症の中に含めて一緒に話を進めてゆくことにする.
失語症と正常との境界には画然とした線が引かれているわけではないし,正常者といっても千差万別であり,教育的背景,平生の言語習慣,方言,職業,知能レベルなどによって相当な開きがあり,とくに痴呆との境界については判然としないことが多いものである.
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