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現在リハビリテーション施設においてリハビリテーション(以下リハと略す)・サービスを行うにあたって最も隘路となっているのは,それぞれのリハ施設に働く専門職員をうることが非常に困難であるということである.またこのことが日本におけるリハの発展を阻害しているといっても過言ではない.またリハ・サービスを十分に行うためには,それがリハ病院であれ,一般病院であれ,はたまたリハ施設であれ,リハの体系からいってその職種は甚だ複雑である.いまわたしの勤務している国立身体障害センターは,勤務員僅か100人の定員に対して約30職種の人達がその組織の中で働いていることになる.それでも中にリハ病院に類したものがあるがこれが満足な形体をなしておらず,また施設としてもその組織上からはリハ施設として抜けている職種があって国立の施設として地方の施設を指導したり,地方施設の職員の研修をしたりするのにはまだ不十分で,その不足している職種が10職種位あるように思える.その中で特にリハに関係のある,すなわちリハの評価判定に必要な職種だけでも30種類位あるのである.一人の患者に対してそのリハ・サービスを行いゴールを設定して社会に送り出すまでには,この三十数人のリハチームが1年間に何回となく評価判定を行い逐次ゴールにまでもっていくのに,いかに複雑なサービスを行っているかは余り世間に知られていないし,その担当省である厚生省でも施設に,あるいは病院におけるリハ・サービスに対する理解や認識が足らないのではなかろうかと思われるし,ましてや大蔵省の担当官には理解できない面も多いのではなかろうか.それ故リハに対する予算を要求したり,人員の増員を交渉しても大蔵省も人事院も行政管理庁も責任のなすり合いでなかなか理解してもらえないのが現状のように思われる.これはわれわれリハ関係職員の国や行政機関への努力が足らないのかもしれないが,また一つにはこれら関係各省庁の担当官が直接リハ施設の設備や管理状態や組織についてじっくりと視察する暇がないことにもよると思われる,今一つは予算説明の前の段階ででもリハ施設や病院の担当各職種の主任級や医長さん達に直接詳細な説明をしてもらって勉強した上で厚生省の課長や局長級の行政上の説明を聞いてもらうと,より理解してもらえるのではないかと思われる.
そもそも医学の体系の中におけるリハ医学の位置づけはわかっていても医学的リハを中心として発達してきたリハ体系がよくわからない職員が厚生省の中にもまだまだたくさんいるし,厚生行政の中でリハ行政の部分が縦割に処理されようとしているところにも問題がある.厚生省内で最もリハ行政について詳しかるべき医務局の外にリハ行政では常にイニシアチブをとっているのは社会局であり,それに追従しているのが家庭児童局である.これは厚生行政の長年に亘る歴史がそうさせているのであってリハと福祉は全く同じであると解している職員も多いのである.
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