書評
Kendall FP, McCreary EK, Provance PG, et al(eds)「MUSCLES, Testing and function with posture and pain(5th ed)」
千田 富義
1
1秋田県立リハビリテーション・精神医療センター
pp.249
発行日 2006年3月10日
Published Date 2006/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102815
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本書は既に人口に膾炙した名著であり,私も版を重ねる毎に購入してこの第5版は3冊目となっている.章の構成は基本的概念,姿勢,頭部・顔面,頸部,体幹・呼吸筋,上肢・肩甲帯,下肢の7章からなっている.基本的には徒手筋力検査の本であるが,「back to basics」と繰り返しているように,神経支配,関節構造,関節可動域,姿勢,疼痛状態,必要な治療体操など,徒手筋力検査に関連する基礎的知識が章毎に丁寧に述べられている.非常に広汎な領域を守備範囲とした特徴ある本である.第4版に比べて,姿勢の章は図や写真を多用してずっとわかりやすい記載となり,神経支配の部分を巻末から各章に移して参照しやすくしている.訓練に関する記載が増えて一層充実している.このように版毎に変化を見つけるのも楽しみの一つである.
徒手筋力検査では,2関節筋で筋力発現を抑制する肢位を採らせるなどにより,個別筋の筋力を測定することを目的としている.神経系病変で生じる運動麻痺であれば,髄節,神経根,末梢神経いずれの病変部位かを鑑別するのに有用となる.治療体操の内容を決定するうえでも参考になる.関節可動域検査と対比される筋長検査も興味深い.関節の角度として表現される筋長から,2関節筋では関節可動域が相互に影響することが理解できる.単関節筋では筋長と関節可動域は同値であるが,2関節筋の筋長は個別に測定した関節可動域の80%となる.
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