書評
O'Young BJら(編),道免和久・藤谷順子(監訳)「リハビリテーションシークレット」
杉山 謙
1
1東北大学肢体不自由学分野
pp.1048
発行日 2005年11月10日
Published Date 2005/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102803
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
包括的リハビリテーション医学の父とも言われるHoward Rusk氏は,病気や障害のみならず,その人の感情的・精神的・社会的欲求を含めた全体を治療することが重要であるということをリハビリテーション医学の哲学とした.障害をもった人々も残された能力を最大限に発揮することで,有意義な社会参加が可能になるということを主張し続けたことは,医師のみならず多くの患者に希望と感動を与えたに違いない.この思想は以後脈々と引き継がれ,現代のリハビリテーション医学の発展へとつながっている.
本書はその思想を引き継ぎ,リハビリテーション医学を学ぶ人達に幅広く支持されているPhysical Medicine and Rehabilitation Secretsの日本語版である.Q & A方式でありながら,総論から各論まで,本質的な内容,幅広い知識を網羅している.訳者らも述べているが,このQ & A方式であることが実にユニークで親しみやすく,かつ曖昧な知識しかもたない場合に「無知の知」を自覚させてくれ,非常に勉強になる.本書は体系だった教科書とは別の,きわめて臨床的な視点から構成されており,またオリジナル版とは別に,各設問につきA,B,Cの難易度に分けられている.これは,これから専門医を目指す小生はもちろん,リハビリテーション医療に関わる医師,看護師,療法士,他のコメディカル職種を含むさまざまな層の読者に対し,それぞれの勉強到達レベルや知識の確認を示してくれる形にもなっている.さらに指導医にとっても,この豊富で実践的なQ & Aは非常に参考になるのではないだろうか.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.