Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
幸田露伴の『疾病の説』―先天性病弱者の福祉
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.1040
発行日 2012年7月10日
Published Date 2012/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102606
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幸田露伴の『疾病の説』(『努力論』所収,岩波書店)は,明治44年の時点で先天性の病弱者に対する福祉の必要性を説いたという点において,刮目に値する作品である.
この作品で露伴は,疾病には「招かずして得た疾病」と「招いて得た疾病」の2種類があるとして,自ら招かざる病を得た者の大部分は「不幸にして強健ならざる体質を享けて生れ来った者」であるとする.露伴は,「もし世に悲しむべき人ありとすれば,不幸にして良からぬ体質を享けて生れ来って,そしてそのために疾病の囚俘となって居る人」であり,「父母の悪血を遺伝し,乃至は薄弱の体質を遺伝して,そして1年中薬餌に親しむというが如き現果を受けて居るのは,実に同情に余りあることである」と主張するのである.
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