天地人
強者と弱者
天
pp.609
発行日 1977年4月10日
Published Date 1977/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207176
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昔さる教授が,学生にむかって,ここに複数の患者がいるとして,どの患者からさきに診るのかという旨の質問をした.学生が答に困っていたところ,「もっとも重篤な患者をまっさきに診るのに決まっているではないか」と一喝されたという.納得できる話である.
ところが,同じことでも,場面がちがえば様相はまったく異なってくる.戦場で,いわゆる大量傷者がでた場合,軽傷者から診るのだそうである.所詮助からないような重傷者に手をとられていては,助かるものも助からないという人間経済の上での発想で,きわあて非人道的な響があるが,戦場そのものがもともと非人道的な場であることを考えると,そのときの医療も,戦場のモラルに立脚しなければならぬということになる.とすれば,この話も解らぬわけではない.
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