巻頭言
福祉用具雑考
井上 剛伸
1
1国立障害者リハビリテーションセンター研究所福祉機器開発部
pp.951
発行日 2012年7月10日
Published Date 2012/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102581
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先日,東北の被災地を訪問する機会をいただきました.釜石は,街自体は動いているものの,未だ鉄骨がひしゃげた状態のビルがそのままになり,津波の威力に改めて驚きを感じました.大槌は,雪原でした.小高い丘の上の公民館から撮られた被災前の写真から,その雪原にびっしりと家が建っていた状況を知らされ,ただただ呆然とするのみでした.1年近くたって,まだこの状況というのは…….まだまだ復興に向けた支援が必要であることを再認識しました.
ただ,復興は着実に進んでいます.仮設住宅や,仮設商店街など,徐々にではありますが,生活に必要な環境ができはじめ,復興計画もまとまりつつあるとのことでした.大槌北小学校の校庭に設置された仮設商店街には,40店舗ほどの店がならび,平日の午前中ではありましたが,買い物にいらっしゃる方々がみうけられました.そこで,お一人の高齢の女性が,歩行車を使って,買い物に来られている光景に遭遇しました.私が拝見したのは,もう帰られるところで,歩行車に買い物袋をぶら下げて,雪でぬかるんだなか,ゆっくりゆっくり,たまに地面の凹凸をよけるように歩行車を持ち上げながら,ゆっくりゆっくり歩かれていました.商店街の敷地から,少し下った坂道を抜けて,ゆっくりゆっくり帰路につかれていました.
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