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はじめに
この10年における変形性股関節症のリハビリテーションは,観血的治療に付随した研究が多い1-3).しかしながら,実際は仕事や家庭などの環境的要因や観血的治療自体への不安,経済的な負担などの個人的要因もあり,変形性股関節症に対しての保存的治療の重要性は高くなっている.投薬や物理療法による保存療法が一般的であるが,変形の進行を予防し,機能を改善していくためには運動療法が重要である.
変形性関節症の病態として,一般的に軟骨がすり減り,関節裂隙が狭小することで,関節構成体に炎症物質が発生し,痛みが生じると言われている4,5).しかし,関節裂隙が十分に保たれているにもかかわらず強い痛みを訴えたり,関節裂隙が狭小しているにもかかわらず,痛みを訴えなかったりすることが少なくない.このことから,われわれは,軟骨がすり減り始めることで,微妙な関節荷重部の偏位が生じ,その偏位を関節包や骨膜などにある感覚受容器が感知し,炎症を生じ,痛みとして認知されているのではないかと考えている.実際に,リハビリテーションにて荷重部の偏位が修正されるだけで,痛みが即時的に緩和していくことを経験する.つまり,いわゆる「ゆるい関節」のほうが変形を生じやすい可能性がある.「ゆるい関節」には,荷重部の異常な偏位が容易に発生しやすく,関節軟骨の摩耗も早い.さらに痛みが生じると筋緊張は亢進し,代償的に関節の安定性を得ようとする.その経年的な結果として関節可動域制限や拘縮が生じているとも考えられる.変形性関節症を診る際には,X線画像のみにとらわれず,歩行などの荷重時の動作を分析し,痛みの発生している本質に目を向けるべきである.
本稿では変形性股関節症患者の運動療法に着目し,保存加療における意義と,評価,治療およびこれからの課題を述べていく.
また,人工股関節手術における運動療法についても項目を分けて解説する.
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