巻頭言
歩行分析はなぜ役に立たないか
山本 澄子
1
1国際医療福祉大学
pp.315
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102026
- 有料閲覧
- 文献概要
下肢に障害のある方々の歩行を分析することは古くから行われています.計測装置があれば多くのことがわかるのではないかと期待し,大規模な歩行分析装置を導入する施設も増えてきています.しかし,実際には計測器がほとんど稼動していなかったり,計測は行うがデータが蓄積されるだけでどうやって臨床に役立てたらよいかわからない,という声が多く聞かれます.歩行分析が臨床に役に立たない理由は何でしょうか.歩行分析では,CTやMRIのように目に見えないことがわかるわけではないと以前から言われてきましたが,ほかにどのような理由があるか改めて考えてみたいと思います.
まず考えられる理由の一つとして,計測したデータが非常に多くて何をどのようにみたらよいか理解するのが難しいことがあります.1回の歩行計測で得られるデータは膨大であり,数秒の計測で容易に100枚以上のグラフを書くことができます.これらの情報のなかから,何が重要でどのように解釈すればよいのかを知るのは至難の業です.特に日本の場合は療法士などが忙しい業務の合間に計測を行うことがほとんどのため,データを十分に分析して理解するための時間的余裕がないことが多いようです.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.