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はじめに
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は,X染色体上のジストロフィン遺伝子変異により,骨格筋の細胞質膜の裏打ちタンパク質であるジストロフィンが欠損し,膜が脆弱性になり,骨格筋線維が変性・壊死する重症のX連鎖性の筋疾患である.幼児期から始まる筋力低下,動揺性歩行,登攀性歩行,仮性肥大を特徴とする.
治療としては,プレドニゾロンやデフラザコートの糖質コルチコステロイド療法が,ある程度DMDの進行を抑制する.次世代の治療法としては,ジストロフィン転写産物のスプライシングに重要な配列を標的としたアンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いて,スプライシングパターンを変え,premature stop codonを回避するエクソン・スキッピング法が注目されており,日本も,欧米を中心に行われている国際共同治験に参加しようとしている.しかし,アンチセンス・オリゴヌクレオチドの効果は一過性であり,ジストロフィンの発現を維持するには繰り返し投与が必要である.また,心筋に取り込まれる効率が低いこと,患者によって用いるアンチセンス配列が異なること,治療費が高額になることが懸念材料として残っている.
遺伝子治療研究は,骨格筋での長期発現が可能なアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが主流であり,骨格筋に親和性のある血清型やsystemic deliveryに威力を発揮する血清型が用いられてきた.しかし,ヒトではAAV抗体を有している人が多く,また,一度投与すると中和抗体ができるため,2度目以降の投与は有効でない.さらに,ベクターに搭載できる外来遺伝子のサイズに制限があり,AAV単独ではDMDの治療法とはなりにくいと考えられる.一方,骨格筋は旺盛な再生能力を有しており,最近のiPS細胞の出現に刺激されて,幹細胞を用いた再生医療はDMDの治療法として大いに期待されている.
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