Japanese
English
研究と報告
青木繁の病跡
Pathographie eines genialen Maler S. Aoki.
加藤 稔
1
Minoru Kato
1
1岐阜大学医学部神経精神科
1Neurologisch-Psychiatrische Klinik, Universität Gifu
pp.781-787
発行日 1971年8月15日
Published Date 1971/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201789
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I.まえがき
わが国の従来の病跡学研究は,そのほとんどが文学者に関するものであって,画家の病跡学研究については知られていない。画家には変人が多いということは巷間よくいわれているところである。私が折にふれて読んだ伝記の範囲内でも,精神医学的にみてずい分問題のある画家が多い。とくに独特の作風をもち,若くて世を去ったという,いわゆる異端の画家に異常をみるものが多い。
私がここで述べる青木繁もまたこの中のひとりである。活躍期間こそ短かかったが,明治におけるわが国の画壇を代表する作家のひとりである。彼のユニークな一連の作品はすでに彼の生前から熱狂的に愛され,天才と評されていた。しかしいっぽう,彼の作品には弧独の翳りを帯び,他方人をひきつけてやまぬ一種奇様な雰囲気が感じられる。そのため私は以前から作者の人格について,とくに関心を払ってきたのである。
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