Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ボードレールの『貧民を撲殺しよう』―支援者と被支援者の対等な関係
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.970
発行日 2009年10月10日
Published Date 2009/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101620
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ボードレール(1821~1867)の散文詩『貧民を撲殺しよう』(三好達治訳,新潮社)は,頽廃の詩人と呼ばれるボードレールの詩のなかでも,その過激さのあまり,生前は遂に出版が許されなかった詩である.しかし,19世紀半ばに書かれたこの詩は,援助する者とされる者の対等な関係という今日的な課題を扱って先駆的な作品のように思われる.
この詩は,主人公が2週間部屋に閉じ籠って当時流行の書物を読んでいたという場面で始まる.彼が読んでいた本とは,24時間のうちに国民を幸福かつ聡明にするとともに富裕にするという方策を論じた書物だったが,そこでは,社会福祉の企業家たちが,すべての貧民にその身を奴隷にせよと忠告していたのである.
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