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昨今,救急体制や産科医不足など,医療提供体制の問題が声高に報道されています。しかし世界的見地に立って考えると,日本はこれまで奇跡的な成果を医療政策であげてきました。例えば,平均寿命や健康寿命のみならず,新生児の死亡率の低さもトップクラスです。世界に冠たる国民皆保険制度を維持し,患者さんにとって自由に病院を選べる「フリーアクセス」という点でも極めて高い満足度を誇っています。コストの面でも国民総生産に占める医療費の比率は8%程度で,先進国のなかで最も低いのです。これらを達成させたのは,医師や看護師たちの献身的な努力です。ところが,この成果の維持も,もう限界にきています。現行の医療費抑制政策のなかで,マンパワーが圧倒的に足らないからです。この問題の解決のヒントは,患者さんの高齢化に伴う医療のパラダイム・シフトを本質的に理解することです。
先日,一般市民の方々を対象に医療セミナーを開催しました。テーマは「がんに対する最新医療」で,現場で活躍されている第一線の医師による講演とパネルディスカッションを行ないました。1000人の定員に対して申し込みはその倍の2000人以上もあり,当日は超満員でした。参加された市民の方々は,本当に熱心で質問もたくさん出ました。そこで感じたことは,医療へのニーズとその対応がこれまでと全く変わってきているということです。患者さんや未病者の方は,病気を撲滅するより,うまく付き合っていくという考えをもってきていること,治療について複数の選択肢をもつことを望んでいます。患者さんの高齢化に伴い,がんについても早期発見・早期治療ではなく,適時発見・適時治療へとシフトしてきていることが,患者さんサイドからも医師サイドからも確認されました。
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