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開発目的
脳卒中片麻痺者の上肢障害がある程度以上重度である場合,患側上肢ではなく,健側上肢を訓練することによって日常生活を行うというリハビリテーションゴールが設定される場合が多い.しかし近年になって,健側上肢を拘束して,患側を集中的に使用するCI療法(constraint-induced movement therapy)をはじめ,いくつかの方法により患側上肢の関節を本人が意識的に長時間,集中的に繰り返し動かす訓練を行うことによって,従来よりも多くの機能が回復される例があることが報告されるようになった1-3).このような治療法は日本脳卒中学会においても推奨されている4).しかし,これを医療の現場で行うためには,理学療法士や作業療法士などが数時間継続して指導に当たる必要があるなど,現在の医療基準で認められていないような体制を組む必要がある.そのため医療費の制約から,医療機関でこれらの手法を導入するには限界があり,その普及には大変時間がかかるものと考えられる.
多くの脳卒中片麻痺者の健側は健常者と同等の動きが可能である.そこでわれわれは,ロボット技術を応用した訓練システムを開発し,健側上肢をセラピストの役割の一部の代わりとすることを考えた.健側上肢の運動をセンサを取りつけた装具で検出し,これに追随するように患側の装具に組み込んだ弱い力のアクチュエータを働かせ,運動のサポートを行うものとした.このアクチュエータは機械的に肘を十分に動かすだけの力はもっていないが,その弱い動きをきっかけとして,片麻痺者自身が意識的に患側を動かし,できるだけ両側が同じ運動となるように努力することが訓練となると考えた.このようなシステムが実用化されれば,医療機関ではセラピストの20分や40分の単位時間を前提とする医療費の限界を越えた訓練が可能となり,医療保険で担われる治療期間が終了した後に福祉施設や家庭でも訓練を継続することができるものと考える.
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