巻頭言
良好なコミュニケーションには共感が必要
影近 謙治
1
1市立砺波総合病院リハビリテーション科
pp.191
発行日 2009年3月10日
Published Date 2009/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101457
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4年前に当院で義足を処方した19歳の青年が,北京パラリンピックに出場した.その感動が覚めやらない2008年9月に,中国・黒龍江省からリハビリテーション科の医師が1年間の研修にやってきた.中国のリハビリテーションの歴史はまだ浅く,中国リハビリテーション医学会は設立されてまだ20年足らずである.40歳代半ばのその医師は,8年前に中医(東洋医学)の医師からリハビリテーション医となった.彼女の日本語の上達は早く,私の診察についていたある日,私と患者の会話を横で聞いていて,「先生は患者の言葉によくうなずきますね.病気以外の話にも多く時間を割いている」と感心された.医師になって20年になるが,余談の多い診察態度がいつの間にか身についてしまっていた.現在の中国の医療は日本と同じような問題を抱えており,患者・家族のリハビリテーションに対する理解はまだ低く,医療現場ではその必要性が認識されていながら,医師や療法士などリハビリテーション関係職種は不足している.そのため,リハビリテーション外来は忙しく,一人の患者に対する診察時間も短いようである.
多くの職種が関連して行うリハビリテーション医療においては,チーム内での良好なコミュニケーションは必須である.チーム医療では情報の共有化が叫ばれているため,患者の身体的な情報は共有されているが,心理面や情緒面に関しての情報共有は十分なされていないように感じる.患者とのコミュニケーションのなかで,その気持ちに対して共感する時間が少ないからではないだろうか.
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