連載 印象に残ったリハビリテーション事例
外傷性脳損傷後の社会的行動障害により,リハビリテーション科の入院継続が困難となった症例
武藤 里佳
1
,
伊藤 利之
1
1横浜市総合リハビリテーションセンター
キーワード:
外傷性脳損傷
,
社会的行動障害
,
精神病院
Keyword:
外傷性脳損傷
,
社会的行動障害
,
精神病院
pp.74-77
発行日 2009年1月10日
Published Date 2009/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101429
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
外傷性脳損傷は15~25歳の男性に多く発生する1).橋本2)は,外傷性脳損傷による後遺症発生数は,全国で毎年10,000人程度であると述べている.症状としては,運動機能障害や高次脳機能障害に加えて,急性期から回復期,維持期にかけて意識障害,興奮,不安焦燥,混乱,攻撃性,衝動性,発動性の低下,抑うつといったさまざまな精神症状を呈する1,3).症状によっては向精神薬などを用いる必要があり,精神科医の関与が欠かせない.重度の脳損傷後,その他の機能障害が時間経過に伴って軽快するのに対し,著明なイライラ感,攻撃性などといった社会的行動障害は増えることが多い.攻撃性は,外傷性脳損傷後の25~30%に見られ,長期的なアウトカムとして重要である4).Tate5)によると,高次脳機能障害には,記憶障害,情報処理速度の低下,遂行機能障害の3徴候が認められることが多い.精神症状,高次脳機能障害への適切なアプローチを,急性期から回復期,そして地域生活へと継続的に提供することが,外傷性脳損傷者の予後を改善するうえで重要である.
今回,横浜市総合リハビリテーションセンター(以下,当センター)に入院したが,精神症状のコントロールおよび生活管理が困難となり,残念ながら精神病院閉鎖病棟への転院を余儀なくされた外傷性脳損傷症例を経験したので報告する.なお,受傷から精神病院入院に至るまでの経過を表1に示した.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.