Japanese
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特集 難病のリハビリテーション―神経筋疾患を中心に
遺伝カウンセリング―医療倫理の概念をふまえて
A role of the rehabilitation in the genetic counseling for the intractable neurological diseases that obeyed medical ethics.
林 泰広
1
,
内山 剛
1
Yasuhiro Hayashi
1
,
Tsuyoshi Uchiyama
1
1聖隷浜松病院臨床遺伝部
1Department of Genetic Counseling, Seirei Hamamatsu General Hospital
キーワード:
遺伝カウンセリング
,
神経難病
,
医療倫理
Keyword:
遺伝カウンセリング
,
神経難病
,
医療倫理
pp.1051-1056
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101375
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はじめに
従来,先祖から子孫へ遺伝子の異常が代々引き継がれて,家族内に同様な疾患が出現する場合,その病気を「遺伝病」(遺伝性疾患,遺伝疾患)と呼んできた.神経筋疾患を含めた,いわゆる難病にはこの意味での遺伝病(狭義の遺伝病)が少なくない.
ところが近年,遺伝学の急速な発展により,癌や生活習慣病なども含めて,遺伝子などの遺伝的要因が関与していない病気を探すのが困難な状況になっている.今や遺伝病は,次世代に遺伝する病気という意味ではなく,遺伝的要因が発症に関係する病気の総称(広義の遺伝病)と捉えるべきである.
しかし,わが国では,未だに遺伝病は特殊な病気であり,普通の人には関係がないという根強い偏見が存在している.医療従事者でさえ,疾患に関する理解が不十分で,誤解されている部分が少なくないように思われる.
その一方で,遺伝病の診断技術は着実に進歩し,出生前診断,発症前診断すら可能となっている.ただし,診断結果を知らせることにより患者,家族に重大な問題が引き起こされる可能性があり,臨床の現場では新しい技術,知識をどのように患者へ還元するべきかについて倫理的な議論が生じている.
本稿では,まずリハビリテーション専門職が医療者として知っておくべき最近の医療倫理の概念を確認し,そのうえで,患者・家族が神経難病とどのように向き合っていけばよいのかを支援する「遺伝カウンセリング」の実際と,その際にリハビリテーションが関わる意義について述べる.
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