Japanese
English
講座 脳科学の進歩とリハビリテーション・2
運動学習―大脳皮質・基底核の観点から
Contribution of cortico-striatal system to motor learning.
虫明 元
1
,
橘 香織
2
,
乾 敏郎
3
,
丹治 順
4
Hajime Mushiake
1
,
Kaori Tachibana
2
,
Toshiro Inui
3
,
Jun Tanji
4
1東北大学大学院医学系研究科生体システム生理学分野
2茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科
3京都大学大学院情報学研究科認知情報論分野
4玉川大学脳科学研究所
1Department of Physiology, Tohoku University Graduate School of Medicine
2Department of Physical Therapy, Ibaraki Prefectual University of Health Science
3Graduate School of Informatics, Kyoto University
4Brain Science Institute, Tamagawa University
キーワード:
運動学習
,
大脳皮質運動野
,
大脳皮質―基底核回路
Keyword:
運動学習
,
大脳皮質運動野
,
大脳皮質―基底核回路
pp.973-979
発行日 2008年10月10日
Published Date 2008/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101358
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はじめに
基底核の疾患には,パーキンソン病などがよく知られており,症状として無動症,振戦,固縮などの運動障害を伴うが,最近の知見では,非運動性の障害も含むことが多いことが明らかになってきている.また,基底核は系統発生学的に古い脳として位置づけられていた.鳥類には大脳皮質はほとんどなく,終脳はほぼ基底核だけと信じられていたためである.しかし現在では,鳥類にも基底核と大脳が新たに位置づけられている.さらに言語に関して,ヒトと鳥類の比較神経科学的研究のなかで基底核の役割が注目されてきている.
このように基底核の機能的意義はさまざまな次元で変化してきている.また最近,解剖学的に基底核が大脳皮質,脳幹と神経回路を形成しながら,運動機能から認知機能,さらに動機付け,感情にわたる広範囲に関わるきわめて重要な神経細胞集団であることが判明してきた.大脳皮質も運動野以外に,前頭前野や他の大脳皮質連合野と回路を形成することが判明している.さらに,伝達物質も含めて基底核内の回路を詳細に調べられるようになり,とくにドーパミンは報酬系として強化学習時の役割をもつことから,基底核は,学習に関わる可塑的な部位としても捉えられるようになった.そこで,改めてヒトの基底核の機能的理解が大切になってきた.本稿では,基底核とそれに関係する領域について記述する.
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