Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ホイットマンの『自選日記』―精神障害者の正常性
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.302
発行日 2008年3月10日
Published Date 2008/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101212
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『草の葉』で有名な19世紀米国の詩人ホイットマン(1819~1892)は,1882年に発表した『自選日記』(杉木喬訳,岩波書店)のなかに,カナダの精神科病院を訪れた時の体験を描いている.『自選日記』の『狂人と共にした日曜日』という章には,1880年の6月にオンタリオ州の精神科病院で行われた礼拝式の様子が,次のように描かれているのである.
その病院本館の広間は質素な作りではあったものの,掃除がゆき届いて気持ちがよかった.ホイットマンは,説教壇の近くに肘掛け椅子をあてがわれて,「種々雑多な,しかしまったく行儀のいい,秩序ある会衆」のほうを向いて座っていたが,その時会った患者たちのことを,次のように語っている.「ああ,あのたくさんの顔から注がれる眼ざし!その中の二,三の顔を,わたしは一生忘れられないだろう.際立って目をそむけさせるような,またゾッとするような顔はまったくなかった.」
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