Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
カントの障害受容論―『人間学』の「退屈と気晴しとについて」
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.824
発行日 2007年8月10日
Published Date 2007/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101025
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カント(1724~1804)の『人間学』(坂田徳男訳,岩波文庫)には,カントの障害受容的な考え方が示された部分がある.
『人間学』の「退屈と気晴しとについて」という章で,カントは「我々は何事をも気に病むのであってはならない」として,「生の終熄と同時でなくては熄もうとしないものとしての苦痛を,わざわざ思い悩む」ような心気症的な態度を批判する.カントは「いかんとも変更されないことがらは忘れられねばならぬ」,「既に起ってしまったことを起らなかったとしようとするのは無意味だからである」と,今更変えようのない現実を思いわずらうことの無益さを強調するのである.「自己自らを改善することはたしかに可能であり,同時に義務でもある.しかし自分の力で如何ともしえないことがらを改善しようとするのは不合理である」.
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