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上に訳出したV. v. Weizsäcker(1886-1956)の論文は,1926年彼がはじめてSiegmund Freudを訪ねたWienと,翌1927年2月,既に数年来の知己であった哲学者Max Schelerの招きによりKolnのカント協会で行った講演であり,彼の医学的人間学―その生証人として後に彼はSchelerとFreudをあげた―の出発点となったにとどまらず,今世紀20年代における医学のみならず他の学問の領域における新しい入間学誕生の一標石ともなった記念碑的著作であるが,V. v. Weizsäckerの医学的人間学とその周辺については,最近既にかなり詳しく述べる機会(浜中,1972)があったので,ここでは繰り返しを避け,人間学および医学的人間学の歴史的背景について―今世紀の医学的人間学には,後述するごとく19世紀初頭のそれの復興とみなし得る一面もある―若干の補説を試みたい。
人間学はAnthropologie(独)の訳語である。この西欧語(ラテン語ではanthropologia,英語ではanthropology,仏語ではanthropologie―以下A.,医学的人間学はm. A. と略す)は,ανθρωποδ(人間)とλογοδ(言葉,論述,学)なるギリシャ語より16世紀につくられた合成語であるが,明治初年わが国に西洋科学が紹介されて以来,人身学・人学・人道・人性学(西周,昭和6年まで),人類学(井上哲次郎,同14年),人間学(大月隆?,同30年前後)など様々な訳語が当てられてきたことからもうかがわれるとおり,―今日でこそわれわれが人間学と人類学のもとに理解する2つの主たる意味を付与されるに至ったとはいえ―歴史的に,また各国の精神史的伝統の相違に応じて,様々に異なる意味で用いられてきた。

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