Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ジョンQ―最後の決断―」―負け組からの異議申し立て
二通 諭
1
1千歳市立北進中学校
pp.283
発行日 2003年3月10日
Published Date 2003/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100821
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国民の大多数が中流だと思っていた時代もあったが,市場主義の台頭はそんな意識を見事に粉砕した.そしていま,若者たちは“勝ち組・負け組”という言葉を使っている.ごく少数の勝ち組に対して圧倒的多数が負け組または負け組予備軍だと思っているのが現下の状況である.一方,勝ち負けの世界から降りたいという願望が「阿弥陀堂だより」や「たそがれ清兵衛」のヒットを生み出した.中高年を中心とした,状況に対する静かなる反発と言えよう.私も含め日本人は小津安二郎的諦観の世界が好きなのだ.
アメリカはこうは行かない.堪忍袋の緒が切れてドスを抱えて殴り込みという健サン的状況になっているのだ.連邦政府(自由裁量)予算の半分以上を軍事費に回し,しかも医療も市場原理で展開してきた国のことだ.「ジョンQ―最後の決断―」(監督/ニック・カサヴェテス)のような問題は当然のごとく起こるであろう.
ジョン(デンゼル・ワシントン)の息子マイクは野球の試合中に倒れる.医師の説明によれば,数週間または数日の命.助かる道は心臓移植だけ.
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