Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
トルストイの『アンナ・カレーニナ』―レーヴィンの農民観
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.282
発行日 2003年3月10日
Published Date 2003/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100820
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トルストイが1877年に完成した『アンナ・カレーニナ』(工藤精一郎訳,集英社)の第Ⅲ部冒頭には,レーヴィンと兄との対照的な農民観が描かれていて,宮沢賢治の農民観やわれわれ自身の障害者観を考えるうえでも示唆的な内容が含まれている.
田舎貴族レーヴィンの兄は,「頭脳労働の疲れを休めるために」,弟の経営する村へやって来た.兄の信念によれば「最良の生活は村の生活」であり,彼はその生活を享受するために弟の村へやって来たのである.レーヴィンの兄にとって村が素敵に見えたのは,村では何もしなくても良いからだった.そんな彼は,「農民を知っているし,愛していて,ときどき農民と話し合ったことや,装ったり,もったいぶったりせずに農民と話をするすべを心得ていて,こうした話し合いから農民に有利な,そして自分が農民を知っていることの証明になるような,一般的な資料をひき出したことなどを,語った」.
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