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概 念
反射性交感神経性ジストロフィー(refrex sympathetic dystrophy;RSD)やカウザルギー(causalgia)は,神経因性疼痛の代表的疾患であり,外傷の治療やリハビリテーションを行ううえで,障害因子としてその存在を避けては通れない疾患である.また,術後に発症することもまれではなく,訴訟問題に発展することもあり,医療関係者にとって好ましからざる疾患であると言える.
カウザルギー(causalgia)は,1864年にMitchell SWらが南北戦争の傷痍軍人らの治療にあたり銃創による末梢神経の損傷後の灼熱感を伴う難治性の慢性痛を報告し,1867年にはじめて用いた言葉である1).1946年にEvansが外傷後の同様の症状に交感神経ブロックが有効であることから反射性交感神経性ジストロフィー(refrex sympathetic dystrophy:RSD)と表現した2).その他,肩手症候群,Sudeck骨萎縮など同様の病態を指し示す用語が,混在しながら使用されてきたが,1986年に国際疼痛学会は,カウザルギーを「末梢神経幹あるいはその分枝の部分損傷後に,四肢に起こる灼熱痛,交感神経の機能異常および組織の栄養障害の認められる症候群」,RSDを「主要な神経の損傷が認められない骨折などの外傷後に交感神経のhyperactivityと関連して四肢に生じる疼痛」と定義した3).
さらに,これまでRSDと呼ばれていたものが必ずしも交感神経依存性疼痛ばかりでないことなどから,1994年に国際疼痛学会は,これらをcomplex regional pain syndrome(CRPS)と命名し,これまでいわゆるRSDとされていたものをtypeⅠ,神経損傷を伴いカウザルギーと呼ばれていたものをtypeⅡと細分した4).但し,まだその病態のすべてが明らかにされていない現在,その分類も完璧なものとは言えない.
そこで,本稿では論旨をわかりやすくするために,現在CRPS typeⅠとされているいわゆるRSDを中心に解説し,カウザルギー(CRPS typeⅡ)は末梢神経損傷を伴うRSDとして必要事項を付記する形で論を進めたい.
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