Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
臨床的には立位でのバランス反応検査(以下,バランス反応検査)として,立位となっている状態に外力を加える方法が簡単で多用されている.理想としては重心動揺計などを用いて定量的に測定する方法が望ましいが,姿勢制御との関連性は明確にできない可能性もある.バランス反応検査では一般に,自動的にどこまでバランスを崩せるかとか,外力を与えてバランスを保持できるかを評価する.後者では外力の大きさの程度が主観的となってしまうため,一定した条件で測定できない欠点を有する.
筆者ら1,2)は過去に,立位をとった健常者に対して,定量的な外力を加えて下肢の筋活動パターンを観察する実験を行った.具体的には後方から他動的な外力(以下,外力)を加え,腓腹筋,大腿二頭筋,大腿直筋の筋活動が起こる順位を観察した.そのとき,弱い外力では一定せずにばらつき,被験者が立位を保てる限界に近い,強い外力を加えるとほぼ一定したパターンを呈することを確認した.この筋活動パターンは外力を肩へ加えるか,腰へ加えるかによっても異なる特徴を有するが,いずれも最初に腓腹筋が活動する傾向は変わらない.
ところで,さまざまな条件で外力を加えたとき,筋活動パターンを観察する他に筋の活動開始する時間(以下,活動開始時間)はどうだろうか.もし,外力の条件により異なるのであれば,時間的な姿勢制御の異なりも考えなければならない.姿勢の崩れに対して活動開始時間が早いか遅いかを知ることは姿勢保持能力の指標として役立つはずである.筋の反応時間が刺激の強度に影響を受ける3)ことから類推すると,これに類似した活動開始時間は外力の強さによって変化する可能性も否めない.仮にそうであれば,外力の方法を一定にしなければならない.
以上のことから本稿では,筋活動開始時間が外力の種類によって変化するか知ることを目的として,基礎的な実験を行った.具体的には立位をとらせた健常者の後方から肩または腰に外力を加え,また外力の強さを変えたときに腓腹筋の活動開始時間は変化するか検討した.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.