巻頭言
理学療法士教育における臨床実習の危機
中屋 久長
1
1高知リハビリテーション学院
pp.611
発行日 2004年7月10日
Published Date 2004/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100606
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昨今の理学療法士養成校急増で教育カリキュラムで大きなウエイトを占める臨床実習に危機が生じている.指定規則で総単位数93単位に占める臨床実習は18単位(810時間),実習時間の3分の2は病院・診療所での実習が義務づけられている.実習施設指導者は相当の経験を有する者,そのうち少なくとも1人は免許を受けた後3年以上業務に従事した者であること.指導者1人に対して実習生は2人,実習施設のうち1か所は養成施設に隣接していることが望ましいとされている.
平成16年4月現在,理学療法士養成施設は172校,1学年定員は7,934人であり,少なくとも3~4年後には8,000人を超す学生が臨床実習にでることとなる.現在,有資格者は41,243名で,平成16年3月現在の日本理学療法士協会員数は31,855人で,医療機関勤務者は24,051人,76%である.中間施設,介護福祉施設勤務者は3,381名,10.6%である.ちなみに理学療法士養成施設の教員は1,085人,3.4%を占める.協会員の年齢構成であるが,21~30歳が17,059人,53.6%,40歳以下が27,179人,85.4%を占め,平均年齢32.0歳と,若い集団である.養成校教員の要件は経験5年以上であることから臨床指導者の要件以上を満たす者から1,000名を差し引くと,臨床実習指導者はさらに少なくなり,極端に若い指導者が大半を占めることになる.16年度開校の養成校は,大学を含め10校,少なくとも100名近い教員が臨床現場から動員されたことから,近い将来どころか現在でも実習施設および指導者不足は深刻な状況にある.
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