Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』―人間に課せられた身体的なハンディ
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.90
発行日 2004年1月10日
Published Date 2004/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100534
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1941年に発表されたエーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』(日高六郎訳,東京創元社)は,精神分析的な観点から近代人の性格特性を論じた作品であるが,そこには「人間の生物学的弱さが,人間文化の条件である」という一種の病跡学的な認識が示されている.
フロムは,『自由からの逃走』の第2章「個人の解放と自由の多義性」のなかで,本能の支配下に行動する動物と,本能から比較的自由な人間とを比較して,「発展段階の低い動物であればあるほど,自然への適応やすべての行動が,本能的反射的なメカニズムによって支配されている」のに対し,人間は強制的な本能から一歩自由になることで,人間以前の段階から脱却したと語っている.フロムによれば,「行動様式がもはや遺伝的なメカニズムによって固定されなくなるとき,人間存在ははじまる」のであり,人間の自由とは,「行為が本能的に決定されることからの自由」にほかならないのである.
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