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今年のリハビリテーション医療界の最大の話題は,4月に行われた診療報酬改定であろう.ここ数年,リハビリテーション部門は人員の配備,訓練室の面積など,一定の要件を満たすと,診療報酬面でプラスとなるため,多少無理をしてでも総合リハビリテーション施設基準を満たすよう整備が行われた.そして今回の改定である.早期加算は廃止する……と一様に廃止の一言で,診療報酬が大幅に引き下げられた.これは,加算という言葉はおまけのニュアンスがあるから,いずれなくすということであったのであろうか.この手法は今後の教訓にしなければならない.われわれのリハビリテーション部では約半数の患者が整形外科疾患患者で,そのほとんどが術後4週以内の早期加算対象であったため,この4月から1単位あたりの点数が350(330)点から180点へと,信じられない引き下げとなった.試算すると昨年同時期と比較し,整形外科患者に絞ると約40%の減収となった.これは健全な医療の継続が困難になる,非現実的とも言える改定である.どのような発想をもって,このような大幅な引き下げが,いとも簡単に行われてしまったのであろうか.国立大学は法人化されて,収益面がより綿密にチェックされつつある.そういう流れのなかで,今回の改定はリハビリテーション部の増員を非常に難しくしてしまった.
一方で,大学病院の責務はなんといっても,リハビリテーション専門医の育成であろう.しかし,現在でも多くの大学にリハビリテーション医学講座が存在しない状態が続いている.医療の基本領域としてリハビリテーション科が公認されているにもかかわらず,大学にリハビリテーション医学講座ができない理由はどこにあるのであろうか.この10年,少ないながらも大学で新規講座が新設されるなかで,リハビリテーション科はおいていかれた状態である.リハビリテーション医療の重要性を訴え,大学内で頑張ることが講座新設へつながるので,地道に努力するようにと,多方面から言われ続けているが,他の新設講座をみるにつけ,大学内でそれまで実績などないが,必要な部門であるとして新たな講座がいきなりでき,教授を公募し,他施設から引っ張ってくるなどのパターンはしばしばあり,リハビリテーション医学講座ができない理由は,何か他にあるように思わざるをえない.講座がないということは,学生の目からみれば,やはり講座のある診療科とはどこか違う存在にみえてしまうのではないだろうか.
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