福祉サービス提供者への安全管理研修会の効果

Effect of a safety management seminar on caregiver.

はじめに

　近年，医療事故の顕在化が多くなり，その対策が急がれている．筆者らは，介護保険制度の開始に伴い2001年に福祉用具の安全に関する調査を行った．それによると，うっかりミスなどの人的要因と管理業務の不備といった組織事故が多く見受けられた^1,2）．福祉領域の支援戦略で重要な福祉用具事故の人的要因についても以前から指摘されている^4,5）．Williams^6）は，ヒューマンエラーを引き起こす条件として，「仕事の内容をよく知らないこと」，また，違反を引き起こす条件として，「組織に安全重視の風土がないこと」を指摘している．わが国においては，2002年8月の医療安全対策のための医療法施行規則が変更され，2003年4月からは医療安全管理体制の確保が管理者に義務づけられるようになった．また，2002年には，「福祉サービスにおける危機管理（リスクマネジメント）に関する取り組み指針～利用者の笑顔と満足を求めて～」が発表されており，医療・福祉領域の安全管理の推進が図られている^7）．

　今回は，福祉領域におけるヒューマンエラーの予防，および組織事故対策の重要性の普及を目的とした安全管理研修会を行い，安全への理解度にどのような変化が生じたかを検討したので報告する．