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はじめに
橈骨遠位端骨折後には多くの症例で手関節の可動域障害や握力の低下が認められる.特に,握力の低下は日常生活上の手の使いづらさの主原因ともなることから1),強い握力の獲得は治療目標の一つにも掲げられる.それにもかかわらず諸家の報告2-5)によれば,本骨折後の握力回復は必ずしも良好であるとは言えない.
初期治療の方法や解剖学的修復度の違いが握力の回復にどのように影響するかについてはさまざまな分析が加えられている2,6-12).しかし,どのような後療法が握力の回復にとってより有効であるかの検討は十分にはなされていない.受傷後の訓練開始時期が早いほど握力の早期回復に有利である13-17)ことについては一定の同意を得ているが,どのような内容の訓練を行えばより早期に回復するか,あるいは最終的により強い握力を獲得できるかについては検討すべき余地があると言える.
強い握力を発揮するためには,把握時に手関節が一定肢位で保持される必要がある18).その肢位は,数々の研究19-23)により,概ね背屈位であることが確かめられている.また,その肢位を保持するためには,手関節の背屈筋群が十分な張力を発生しなくてはならない24).橈骨遠位端骨折後の症例では,廃用などによってこの筋群に筋力低下を生じていることが容易に想像できる.また,それが握力低下の要因として作用していることも仮説として挙げられる.そこで,本骨折後の手関節背屈筋力を調べ,握力低下との関係を検証することを研究の目的とした.この点が明らかにされることによって,握力の回復を目的としたより効率的な訓練プログラムを考えるうえでの参考資料として活用できるものと考えた.
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